アメリカインディアン ホピ族の神話

第1章② 第1の世界 クモ女と双子

 クモ女と双子


 ソツクナングは、第一の世界トクペラとなる宇宙に行き、女を創造した。
 その地に留まって彼の手助けとなるはずの女である。名をコクヤングティ【クモ女】といった。

 生命に目覚めて名をもらうと、彼女は尋ねた。
 「なぜ、私はここにいるのでしょう」
 ソツクナングは答えた。
 「まわりを見よ。われわれの創造した地球がここにある。そこには形と物質、方向と時、始まりと終わりはあるが、生命だけがまだない。喜ばしい動きがない。喜ばしい音がないのだ。音と動きなくして、生命があろうか?そこで、生命をわれわれが創造するのを手助けする力が、あなたには与えられている。また、あなたの創造する全てのものを祝福する愛と知恵、知識も与えられている。それがあなたがここにいる理由である。」

 彼の指示に従って、クモ女は土を幾らか手にとり、それをツチュバラ【唾液】と混ぜて、二つの存在にかたどった。次に、創造の知恵そのものである白い物質でできた覆い【ケープ】をその上にかけ、創造の讃歌をうたった。覆いをとると、双子が立ち上がって、こう尋ねた。
 「私たちは誰ですか? なぜ、ここにいるのですか?」
 クモ女は、右の者にいった。「あなたはポカングホヤ。あなたは、生命が芽生えるときに、この世界に秩序を保たせるのです。全世界に出ていって、地球が完全に固まるよう、あなたの手を差し伸べなさい。それが、あなたの義務です」
 クモ女は、次に左の者に向かって言った。
 「あなたはパロンガウホヤ。あなたも、生命が芽生えるときに、この世界に秩序を保たせるのです。全世界に出てゆき、どこからでも聞こえるよう音を送り出しなさい。これがあなたの役目です。これが聞かれるとき、あなたは『こだま』として知られるようになるでしょう。全てのものは、創造主の『こだま』なのですから」

 ポカングホヤは地球を隈なく旅して、高い場所を山々に固めた。また、低い場所も固めたが、後にその場所に置かれることになる者たちが土地を使えるように、柔らかくしておいた。
 パロンガウホヤは、地球を隈なく旅して、命じられたままに声を響き渡らせた。両極を貫く地軸に沿った波動中枢の全てが、彼の呼び声に反響した。全地は震え、宇宙は共鳴して揺れた。こうして、彼は全世界を音の道具にして、音の情報を伝えるための、そして万物の創造主への讃歌を響かせるための道具にした。

 「伯父よ、これがあなたの声です。万物があなたの音に反響しています」とソツクナングはタイオワにいった。
 「上出来じゃ」とタイオワは答えた。

 自分たちの役目を終えると、ポカングホヤは北極に、パロンガウホヤは南極に送られて、世界を秩序正しく回らせることになった。ポカングホヤはまた、地球を安定した固体の形に保たせる力を与えられた。パロンガウホヤは、空気を秩序正しく動かし続ける力を与えられ、地球の波動センターを通して声を送り出すよう命じられた。
 「これが、今後のあなた方の役目です」とクモ女は命じた。

 彼女は次に、樹木、灌木、草、花、種をつけるあらゆる種類の植物を土から創造して地を覆い、一つ一つに生命と名前を与えた。また、あらゆる種類の動物と鳥たちを創造した。
まず土で形を造り、そこに白いケープをかけ、歌をうたった。あるものは自分の右側に置き、あるものは左側に、あるものは前に、あるものは後ろに置いて、地の四隅に向かって広がるように命じた。
 ソツクナングは、美しい陸、植物、鳥と動物、その間を流れる力をみて楽しく思った。
彼は喜びに満ちてタイオワにいった。「私たちの世界がどんな様子かをどうかごらんください」
 「大変良い」とタイオワは答えた。
「次は人間の番だ。これで私の計画が完成する」