アメリカインディアン ホピ族の神話

第2章 第2世界の誕生

 第2の世界


 この間、選ばれた人々は蟻人間とともに地底で平和に暮らしていた。彼らの家は、地上にいたときの状況とよく似ていた。生活するための部屋があり、食物を蓄える部屋があった。また、まわりを見るための光もあった。蟻塚の砂の中にある微少な結晶が太陽の光を吸収していた。人々は両目の後ろにある中枢の内的な視覚を使って、その光の反映を見ることができたのである。

 ただ一つのことが悩みの種だった。
 食糧が底を尽き始めたのである。ソツクナングが、第二の世界を創造するために時間は長くはかからなかったが、第一の世界が滅びた後、冷えるまでに時間がかかった。食糧が不足してきたのはこのためである。
 「苦労して集めた食物をそんなにくださらなくて結構です」と人々は言った。
 「あなた方はお客さまです。私たちのものは、またあなた方のものです」と蟻人間は答えた。こうして、蟻人間は自分たちの食糧を人々に与え続けた。
 彼らは毎日、自分たちの帯をきつく締めた。今の蟻が腰のところで細くなっているのは、このためである。

 ついに、第一の世界は冷えた。ソツクナングはそれを清め、第二の世界を創造し始めた。海のあったところは陸、陸のあったところは海に変えて、ソツクナングは地上の様相を一変させた。このため、第二の世界に生まれた人々は、かつての悪しき世界については何も思い出すことがなかった。

 全てが完了したところで、ソツクナングは蟻塚の屋根をたたき、呼びかけた。すぐに蟻人間の族長が上に昇ってヌタを押し開き、こう言った。「どうぞお入りください」
 ソツクナングは、まず蟻人間に声をかけた。
 「この人たちを助けるのに力を尽くしてくれたことに感謝する。あなた方のしてくれたことは、いつまでも覚えておこう。今、あなた方は務めをはたしたので、第二の世界に上がり、蟻として生活しなさい。やがて次の世が滅びるときがくる。そのとき、悪しき人々は蟻塚の上にやってきて座り、あなた方に救ってくれるよう叫ぶだろう。」

  次に、ソツクナングは人々に言った。
 「私の造ったこの第二の世界に入りなさい。前ほどは美しくないが、それでも美しい世界である。増え、幸せに過ごしなさい。しかし、創造主とその掟を心にとめなさい。創造主に対する讃美の歌がきかれるうちは、あなた方は私の子であり、私に近い」

 こうして、人々は第二の世界に現われた。その名はトクパ【真夜中】、方角は南、色は青、鉱物はコチャシバ【銀】である。主な生物は、サラビ【モミ】、クワワ【ワシ】、コリチャウ【スカンク】。

 そこは広大な陸地で、人々は急速に増えて地の四隅に広がり、地球の裏側にまで広がった。人々は霊において一致していて、頭頂の中枢から互いに見ては話すことができた。
 この扉がまだ開いていたので、彼らはソツクナングを身近に感じ、また創造主タイオワに讃美の歌を捧げていた。